22歳の時に3ヶ月かけてアメリカ、カナダを横断する一人旅をしたのですが、その時に立ち寄ったヨセミテやザイオン、グランドキャニオン、バンフなどの国立公園での経験が今の生き方に大きく影響をしています。英語でWilderness(ウィルダネス)と呼ばれる手つかずの大自然に触れたのは初めての経験でした。とにかく、これら国立公園群での自然体験は衝撃的で、それから本格的に山歩きを始めました。私の周囲には山をやる人間がまったくいなかったため、すべてを独学で学びました。基本的に単独山行が多かったですね。
私は20歳からゲーム業界で企画者として働いていました。そもそも、なぜゲーム業界を選んだかと言うと、自分なりに人に伝えたい「メッセージ」があり、ゲームが一番適していると考えたためです。しかし、現実的にゲーム業界でそれを実現することは難しく、自分の将来について悩んでいた時期に、作家でアウトドアライターの加藤則芳さんに出会いました。加藤さんから計り知れないほどの影響を受け、そしてアメリカ、カリフォルニアのジョンミューア・トレイルを歩いた経験が、今の世界に入った一番大きなきっかけです。この経験を通して自分の「メッセージ」を人に伝えるあり方を改めることになりました。
私たちは普段、文明の中で生活していますが、自然、もしくは自然体験が豊かな社会形成に必要なものであることは明白です。自然から学び、それらを人の生活に活かすことが私の信念の一つです。本来の姿で残る原生自然の世界に足を踏み入れると、花、動物、川や木々などの自然の中に組み込まれたシステム、メカニズムには心から感心をさせられます。ガイドとして毎日のように山を歩いていると、自然の中で起こる小さな変化を感じられるのがいいですね。ああ、この花はこのように変化していくんだな、など新しい発見が毎日のようにあります。また、山の経験が豊富なお客様の話を聞くのも楽しいですね。お客様に教えられることは本当に多いです。
自然の楽しみ方は人それぞれだと思います。ガイドとしてお客様の質問に何でも答えられるのはもちろんですが、お客様それぞれの興味察しながら、その方にあった自然の楽しみ方を提供することを一番大事にしています。お客様が想像をしてなかったほどの感動体験のサポートをすること、それが私のガイドとしての理想像です。
カナダでガイドとして働き始めたのが2005年の夏。2007年には目標であったACMGバックパッキング資格(現在はフル・ハイキングガイドと改名)を取得しました。
カナダに来る前は東京でゲーム開発会社を経営し、ゲーム・ディレクター、プランナーとして働いていましたが、自然に関わる仕事をしたいという気持ちから、31歳の時にカナディアン・ロッキーへと生活の場を移しました。現在はガイドとして働くだけでなく、ゲーム業界時代の経験を活かして、ウェブサイト、販促などのチラシデザイン、マーケティング業務も担当しています。また、サイドビジネスとして、ガイド仲間の秋山裕司と共に出版会社「クラックス・パブリッシング」を運営しています。2011年春には念願の「カナディアンロッキーのハイキングガイドブック」が完成しました。日本でもアマゾンにて絶賛発売中です。
山だけでなく、フライ・フィッシング、マウンテン・バイク、スキー、カヌーも好きですが、最も好きなアウトドア・アクティビティーはバックパッキングです。日本の北、南アルプスや、カナダ、アメリカ、ニュージーランド、ネパール、南米パタゴニアなど、様々な国や地域を歩きました。2004年夏にはアメリカ・カリフォルニア州にある、世界的にも有名な原生自然のロングトレイル、『ジョン・ミューア・トレイル』を踏破しましたが、日数にして30日、食料補給の回数は4回。歩行距離は400Km以上にも及びました。