山旅の準備
国立公園のルール

すべては自然保護のために

カナダ連邦が誕生したのが1867年。まだまだ若い国にもかかわらず、その20年後には国立公園システムが発足しました。これはアメリカのイエローストーン国立公園、オーストラリアのロイヤル国立公園に続く、世界で3番目に設立された国立公園となります。2018年現在、カナダ国内の国立公園は44箇所まで数を増やし、更に数箇所の公園が国立公園になるべく、調査/研究が進んでいます。

カナダで最初の国立公園はカナディアンロッキーのバンフ国立公園です。発足当初は26k㎡の広さで始まったこの公園も、現在では6641平方kmの大きさまで拡張されました。これは、茨城県(6408平方km)とほぼ同じ大きさになり、その規模が想像できると思います。
 国立公園入園には入場料が必要となり、バンフとレイクルイーズのインフォメーションセンターで購入することができます。料金の詳細は『国立公園のページ』からご確認ください。(レンタカーの場合は、高速道路の途中に料金所があり、こちらで購入することができます。)この入園料は国立公園の整備、研究、人件費、レスキュー代、施設代として、下記に述べるカナダ環境省からの予算の一部となります。その割り当てられている予算は約700億円、日本の約7倍です。人口3500万人ほどにすぎないカナダですので、人口一人当たりの負担額にすると日本の約3100倍にもなります。カナダの国立公園は世界的にも有名であり、魅力的な場所なので、世界各国から観光客からの入園料が大きな金額になるとはいえ、この金額の差は歴然としています。

日本の国立公園は、「地域自然公園」「風景の保護」の2点に焦点をあて、国立公園内に住む住人の所有権、財産権の尊重、産業との共存、1つの風景としての保全を主たる目的としているのに対し、カナダの国立公園は環境保護、生態系維持に力を入れています。これは、2国間で国立公園の成り立ち、文化、歴史などが全く異なるところに起因していると思われます。国立公園の実際の管理、運営は環境省の管轄下にある、パークスカナダという部門がおこなっています。1911年(明治44年)に設立され、国立公園を専門的に管理する部門としては、世界で最初となります。

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国立公園局のシンボルマークは『ビーバー』

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国立公園での守るべきルール

1.トレイルを外れずに歩く

ハイキングを楽しむ際は、トレイル(登山道)を外れて歩いてはいけません。写真撮影に夢中になり、足下の植物を踏みつけないように気をつけましょう。

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2.野生動物との距離を保つ

動物の大小にかかわらず、触る、おびき寄せる、邪魔をする、困らせる* などの行為は違法です。*「困らせる」英語ではharass/ハラスという単語が使用されています。セクシャル・ハラスメントのハラスです。さしずめアニマル・ハラスメントでしょうか?

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3.野生動物に食物を与えない

動物へ餌をあげることは違法です。動物達は一度でも人間から餌を与えられることを覚えてしまうと、本来の自然な食性には戻れません。また、ゴミは指定のゴミ箱へ捨てましょう。キャンプ場での食物管理にも注意が必要です。

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4.ペットにはリーシュコードをつける

放し飼いのペットは時として野生動物をおびえさせ、その結果彼らを攻撃的にする可能性があります。飼い主にも危険が及びます。

5.全ての物をその場に残す。

自然公園の中では小石一つでも持ち帰ってはいけません。皆さんがどんなに素晴らしい物を見つけようと、その物の所有者は自然自身です。

6.立ち入り禁止・制限などの公園からの指示に従う。

登山道や道路などは、安全上、環境上の理由で一時的に立ち入り禁止や制限が行われる事があります。その際には看板や注意書きが出ますので、それに従いましょう。

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7.小火器(ピストル、ライフル、ショットガン、マシンガン)などを持ち込まない。

これは日本からの観光の方には関係のない話ですね。

8.国立公園の職員へ報告を!

怪しい人間、ルールを乱す人間を見かけたら通報しましょう。また、人間に限らず熊、クーガー、狼、並びに攻撃的な動物の目撃情報も国立公園は必要としています。電話番号 1-888-927-3367(フリーダイヤル)

UNESCOの世界遺産

カナディアンロッキーの国立公園は、カナダ政府から国立公園として指定されていると同時に、近接する幾つかの国立および州立公園を統合してCanadian Rocky Mountain Parks(カナディアンロッキー山脈自然公園群)として、ユネスコ(UNESCO)の定める世界自然遺産に登録されています。世界遺産に登録されている自然公園は、4つの国立公園(バンフ、ジャスパー、クートニー、ヨーホー)と3つの州立公園(アシニボイン、ロブソン、ハンバー)であり、その総面積は約26,500平方kmにも及びます。北海道が7万8515平方kmですから、北海道の約3分の1が世界自然遺産に指定されていることになります。また、ユーコン準州のクルアニ国立公園も、すぐ南に続くブリティッシュ・コロンビア州や西に続くアメリカ・アラスカ州の山岳群とあわせて、世界遺産に登録されています。

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ユネスコ(UNESCO)とは、『United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization』の頭文字で、国際連合教育科学文化機関を意味しており、日本は1951年に60番目の加盟国となりました。また、世界自然遺産とは鑑賞上、学術上、保存上、顕著な普遍的価値をもつ地形・生物・景観などを含む地域のことを指します。2018年現在、日本で登録されている世界自然遺産は、屋久島(1993年12月)
白神山地(1993年12月)、知床(2005年7月)、小笠原諸島(2011年6月)の4カ所です。

前置きが長くなりましたが、カナダの自然公園の魅力の1つは、このように世界自然遺産に登録されているのにもかかわらず、最低限のルールさえ守れば自由に公園内を散策、ハイキング、テント山行、釣り、などのアウトドア・アクティビティを楽しめることと言えるでしょう。

自由に世界遺産の中で過ごせる代わりに、ルールを破る人に対する罰則は通常よりも厳しくなる傾向がありますので注意が必要です。公園内に入る人はルールを知っていることが前提です。知らなかったでは済まされませんので、公園内に入る前にあらかじめ情報を入手して、自己学習をする必要があります。これは訪問者としての義務といえるでしょう。