考古学者のほとんどは15,000年~20,000年前に人類が始めて北米大陸に入って来たと考えています。それも歩いてやってきたと言われています。現在のベーリング海(シベリアとアラスカの間)は昔は陸続きで、北米とロシアを結ぶ重要な橋の役目をしていました。この陸続きの時代にあった大地をベーリンジアと呼びます。
約20,000年前から始まったウィスコンシン氷河期の時代、ユーコン、アラスカの氷河は何百メートルもの高さがあり、まるで巨大なカーテンを垂らしたかのような大きさでした。この時代、海で発生した雲はアラスカとユーコンにある標高3000m~6000m級の標高の高い地域で、たくさんの雪を降らしました。これらの雪は、本来なら解けて海に入っていくのですが、寒冷期のため、解けずにそのまま山に残り、川となって海に帰ることができません。そしてまた新たな雲が発生し、雪を降らして積もっていきますが、このサイクルを繰り返していくうちに山間部には巨大な氷河が作られ、海抜は現在よりも100m以上も低かったと言われています。そのため、現在は海の底にある海底が陸地として顔を出し、ベーリング海を繋ぐ陸続きの大地となっていたのです。
ベーリンジアは乾燥した大地であるものの、様々な植物が生息しており、草食動物やそれら草食動物を補色する肉食動物も生息していたと考えられています。草食動物ではマンモス、バイソン、馬、トナカイ、うさぎ等。肉食動物ではショートフェイスド・ベア、オオカミ、ライオン、ネコ科の動物等がいたと考えられます。これらの動物は人間同様シベリア、アジアからやってきました。
13,500年前。地球の温暖化により氷河の氷が解け始めました。そして橋の役目をしていたベーリンジアは海中に沈んでしまい、現在のベーリング海となりました。その生活環境の変化に順応できなかったマンモス、ショートフェイスド・ベア、巨大ビーバーなど、40種もの動物が絶滅したと言われています。新しい環境に順応した人間や動物たちは、極北に定住するものもいれば、さらに足を南米へと伸ばし、生き抜いていったものもいます。
現在はファースト・ネイションと呼ばれる先住民が、最初にユーコンに渡ったのは1万年以上前になります。ベーリング海峡が陸地だった時代、アジアからアラスカを経てユーコンに辿り着きました。ヨーロッパ人によるユーコンへの入植の歴史を見ますと、1840年頃から徐々に増えだした白人達は、1890年代のゴールドラッシュ時代に一気に増えたものの、1950年頃までは先住民の生活に大きな影響を及ぼすことはありませんでした。これは白人達の目的が、未開の地の探検や、カナダ最高峰を要するセント・エイリアス山脈を中心とした登山であったためです。
1950年。カナダ連邦政府の経済拡張政策により、先住民の狩猟の経済貢献を否定し、白人の生活に適応する事を強いました。「土地の所有権制度を設ける」「大きな動物の狩猟は免許が必要となる」「罠猟では罠を仕掛ける範囲が制限される」など、これらの制度ができたため、先住民達は祖先から代々引き継がれてきた土地を離れなければならなくなりました。
土地の所有権制度が開始され、まずは石油やガスを掘るための借地契約が白人のみに交わされます。そればかりではなく、数百にものぼる土地資源の契約が白人達に交わされました。1960年には住居のある付近での狩猟禁止令が発令され、先住民は狩猟の自由をほぼ奪われた形になりました。
先住民に関する決め事は、ほとんど白人の間でのみ行われ、1958年にホワイトホースで行われた「先住民生活保護の取り決めの会議」には、先住民はだれも呼ばれなかったため、議論を生みました。